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個人版民事再生、昨年13%増

2017年07月24日

いつもありがとうございます。ansの川瀬です。

今日は借入についてです。

10年ほど前によく聞いた「ローン破たん」とか「自己破産」という言葉、最近あまり耳にしなくなったと思いませんか?

住宅ローンを組む時に、「こんな大きな借金はしたことないから怖い」とびくびくされる方は少なくないのですが、実は、今は住宅ローンだけで家計が破たんしてしまう人は以前に比べるとかなり減っています。

自己破産が最近で最も多かったのは平成15年。年間25万件もの自己破産の申し立てがありました。しかしその後、年々減り続けて平成26年には6万5千件まで減少しました。

自己破産の一歩手前である個人版民事再生手続きも、平成16年に2万6千件だったのが、平成26年には7,688件にまで減りました。自己破産も民事再生手続きもこの10年でおよそ3分の1にまで減少したことになります。

この要因は大きく3つあると思います。

ひとつはこの10年で緩やかに景気が回復してきていること。途中にリーマンショックなどもありましたがここ数年の景気指標は明らかに良くなってきています。

2つめは、リーマンショック後にローン困窮者を救うための法律として平成21年に施行された「金融円滑化法」の影響です。金融円滑化法は、経済の激変緩和措置として返済猶予などの条件見直しに金融機関が応じることを求めた法律です。金融円滑化法はすでに終わっていますが、金融機関は今も条件見直しにはちゃんと対応してくれます。この、今では当たり前になりつつある金融機関が住宅ローンの借入期間の延長とか金利の引き下げとかの条件変更に応じる姿勢はこの金融円滑化法以降のことです。かつては銀行にローン返済条件変更の相談に行ってもほぼ門前払いが普通でした。その頃は、会社の倒産や解雇、給与削減などの不測の事態で住宅ローン返済が厳しくなると、もう自己破産して自宅は競売という事態が多かったことを考えると大きな変化です。

3つめは、平成22年に施行された貸金業の総量規制です。貸金総量規制とは個人の借入総額は原則として年収の3分の1までしか貸してはいけないというものです。総量規制以前は、消費者金融業者などが個人の返済能力など無関係に貸付を行っていました。高金利な借入を年収を上回るくらいにしてしまうと当然のことながらあっという間に返済不可能になり自己破産に追い込まれてしまいます。しかし、借入に総量規制がかかったことで自己破産に至るようなレベルの多額の債務を抱えるケースが減ったわけです。

 

しかし、この個人の破たんがまたじわじわと増えてきているそうです。

↓↓↓

<個人版民事再生、昨年13%増 借りすぎ顕在化>  (2017年7月4日付 日本経済新聞)

『破産せずに借金を大幅に減らせる「個人民事再生手続き」の利用者が増えている。最高裁判所によると2016年は前年比13%増の9,602件と2年連続で増えた。住宅を手放さずに他の借金を減らせる仕組みで、住宅ローンを抱えた人が多く利用しているとみられる。昨年は自己破産も13年ぶりに増加に転じており、借金に苦しむ個人がじわり増えている。』

 

多額の借金を抱えるいわゆる「多重債務」の状態になってしまうといずれ「自己破産」を選ばざるを得なくなります。自己破産すると借金はなくなりますが、自分の財産もすべて失います。苦労して手に入れたマイホームも手放さないといけません。奥さんやお子さんなどの家族の暮らしも激変します。

しかし、まだ安定した収入はあって、住宅ローン以外の借金がなくなればなんとかやっているという人は「個人版民事再生手続き」を利用することができます。自己破産の手前で多重債務状態から解放されます。自己破産と違って家族がマイホームに住み続けながら再生することが出来るのがポイントです。

 

私は、個人が経済的に破たんすることは限りなくゼロに近いレベルでなくしていかねばならないと思っています。そしてそれはそれほど難しいことではないとも思っています。

どうすればよいか?

答えは簡単で、金融機関がお金を貸しすぎなければよいのです。

そもそも金融機関はその業務上の責任において、返済できそうにないお金はそもそも貸すべきではありません。

一般の人は借入について知識も経験もそれほどないのです。どれくらい借りたらいいのか、返済はどうなるのか、金利が上がったらどうなるのか、というようなことが実はよくわかっていない人が多いのです。ましてやすでに多重債務状態になっているような人はもう返済という感覚すらなく、自分の置かれている状況がわからなくなっています。借りられるなら借りられるだけ借りようとします。

だから金融機関がモラルを持って貸出に臨むべきなのです。そうすれば個人の破たんは無くすことができるはずです。

よく「借りすぎ」が問題になりますが、本当の問題は「貸しすぎ」なのです。

 

銀行以外のノンバンクとか消費者金融が社会で一定の役割を果たしているのは理解しています。銀行が貸すことが難しい業種とか資金使途はあります。あまりに短い期間の融資もしません。

ただ、金利10%前後のローンはあっても良いですが、以前のような29%とかなると明らかに行き過ぎです。企業も個人もまず返済できません。

グレーゾーン金利の撤廃や貸金総量規制以降、多くの大手消費者金融は金融機関の傘下に入りました。昨今、仄聞するところによると審査も厳しくなっているようです。審査が厳しいことは悪いことではありません。なぜなら破たんは不幸なことだからです。

 

しかし、残念ながら前出の記事によると平成15年以降ずっと減ってきた自己破産や民事再生手続きがまた増えているとのことです。

前出の記事は次のように続きます。

『住宅ローンを抱えている人が、他にも借金を抱えて返済に行き詰まる構図が浮かび上がる。銀行が住宅ローンの借り換え客に対し、カードローンの契約をセットで勧めている例もあるという。個人再生の増加は一定の財産を持っている層でも借り過ぎ問題が徐々に顕在化していることを示す。』(日本経済新聞)

カードローンは総量規制の対象外です。だからといって審査が緩くなっているとしたらそこはぜひ引き締めてもらいたいですね。

せっかく上限金利が下がり総量規制も定着して個人の破たんが減ってきたのに、再び緩んでしまうことのないようにしたいものです。

皆さんも借りすぎには注意してくださいね。

 

ハッピーリッチ・アカデミー 272号 カワセ君のコラム 平成17年7月19日付 より抜粋 )