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さらなる金融緩和は有効か?

2015年10月13日

いつもありがとうございます。ansの川瀬です。

メルマガで「金融緩和」について書きました。ご参考になれば幸いです。

 

~ハッピーリッチ・アカデミー227号より~

 

よく言われているように、企業向け融資や住宅ローンなどの銀行貸出が増えてくると、世の中にお金が回って景気が良くなっていきます。

意外に思うかもしれませんが、実はすでに銀行の貸し出し姿勢は積極的になっています。

↓↓↓

<銀行貸出残高、9か月ぶり高い伸び 8月2.8%増>

『日銀が8日発表した8月の貸出・預金動向によると、全国の銀行の貸出平均残高は前年同期比2.8%増の426兆3420億円と、伸び率は2014年11月以来9か月ぶりの大きさだった。企業のM&Aや不動産関連向けを中心に貸し出しが伸びた。』(2015年9月8日付 日本経済新聞)

 

実は銀行貸出は48か月連続で前年同期比を上回っています。約4年ですよ。4年間もずっと増え続けているくらい銀行は「積極的に融資を拡大する」という姿勢になっています。

 

これは政府と日銀が推進している「金融緩和」の効果が出ているのかもしれません。

ここで金融緩和についておさらいです。

今の日本の金融緩和は世の中に出回る通貨の供給量を増やすことを狙いにしています。通貨の供給量をモノの供給量以上に増やすことで緩やかなインフレ(物価の上昇)をおこして、デフレから脱却しよう!ということですね。

通貨供給量を増やすためにはよく「日銀がお金を刷ればいい」などと言われますが、実際に紙幣をばんばん印刷しても世の中にお金は出回りません。まず民間の銀行が保有している国債を日銀が買い取ってその代金として新たに発行した円をその銀行の「日銀当座預金」に入金します。しかし、民間銀行の当座預金の残高が積み上がるだけでは世の中に出回る通貨の供給量は増えません。

国債を売って銀行が手にした資金を日本の企業や団体、個人に向けて貸し出しをして、はじめて世の中にお金が出回るのです。

つまり、「大胆な金融緩和」がデフレ脱却にまでつながっているかどうかは、まず銀行貸出がどれだけ増えているかをよく見ておかないといけないのです。

では、民間銀行の貸し出しが4年にもわたって増え続けている今、果たしてデフレから脱却してマイルドなインフレ状態になってきたでしょうか?

 

残念ながらなっていませんね。

相変わらず物価上昇率はゼロ近辺を行ったり来たりです。

銀行貸し出しが「増えた、増えた」と言っても、政府・日銀が期待している水準からみればまだまだ全然足りていないのです。

 

日銀当座預金の残高は2015年8月末にはなんと231兆円もの残高になっています。前年同月比で80兆円、52%も増加しています。

かたや民間銀行貸し出しは前年同月比で14兆円、わずか2.8%しか増えていません。

日銀が金融緩和で増やした200兆円以上もの緩和マネーは日銀当座預金に眠ったままなのです。

これではこれ以上金融緩和をしても効果はありませんよね。

 

海外にはこの金融緩和をもっと強烈にやっているところがあります。

↓↓↓

<欧州短期金利、最低に マイナス0.145% 追加緩和織り込む>

『欧州の短期金融市場で欧州中央銀行(ECB)による量的緩和策の拡充やマイナス金利の一段の引き下げを織り込む動きが広がっている。原油安を背景にインフレ見通しが悪化し、9月のユーロ圏消費者物価指数は再びマイナス圏に沈む可能性が出ている。(中略)短期金利の指標であるユーロ圏の翌日物銀行取引金利は21日、マイナス0.145%をつけ、約3か月半ぶりに過去最低を更新した。』(2015年9月28日付 日本経済新聞)

 

EUでは「マイナス金利」です。お金を使わないと普通は金利がつきますが、マイナス金利の場合は置いておくとお金が減るのです。

ECB(欧州中央銀行)は、余っているECB当座預金残高に対して金利を徴収するのですから、銀行としてはお金を使わざると得ないですよね。

日本の場合には逆に0.1%の金利が付いています。これではEUと違って「余っているお金を貸し出しに使わねば!」という強烈なモチベーションはかからないですね。

つまるところ、まだまだ日本経済の資金需要が回復していないということなのです。商品やサービスがよく売れている、だから在庫を増やしたい、原材料を仕入れたい、工場の設備を更新したい、新たに店舗を出したい、人を採用したい、家を買いたい・・・・、こういう時にお金が必要になります。これが資金需要ですが、この資金需要がまだまだなわけです。

銀行としても「もっと貸したいけど借りてくれるところがない」というのが現実です。

 

今また更なる金融緩和も検討されていますが、問題は「緩和のその先」なのです。

経済を成長させる戦略を具体化して、政府も需要も喚起して、民間の資金需要を高めること。これなしに景気の本格的な回復は望めませんね。政府も、民間銀行も、企業も、私たち個人も成長を志向して行動していかないといけないということだと思います。

 

今回は以上です。