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マイナス金利の狙いと影響とは?

2016年02月5日

いつもありがとうございます。ansの川瀬です。

今回、日銀が実施したマイナス金利についてメルマガに書きましたので転載します。

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『マイナス金利の狙いと影響とは?』(ハッピーリッチメルマガ 2016年2月2日)

 

■日銀が実施したマイナス金利の狙いとは?

先週末に金融市場では大きなニュースがありましたね。そう「マイナス金利」です。

「マイナス金利」ってなじみがないワードですよね。

普通は当然「プラス金利」です。預金をすれば金利相当分の利息がもらえます。借入をすれば金利相当分の利息を支払います。

それが「マイナス金利」になると、預金をするとお金を支払わないといけません。借入をすると逆にお金がもらえます。

変な感じですね。

このニュースを聞いて「これでは預金が減ってしまう!」と慌てたお年寄りがいた、といかいう話もありましたが、今回のマイナス金利導入で直ちに預金が減ったり、ローン利息がなくなったりすることはありません。今回のマイナス金利は「銀行の銀行」である日本銀行に民間銀行が置いている当座預金に対して適用されます。狙いは民間銀行が日銀に預けたままにしているお金をもっと民間企業への融資や住宅ローンに振り向けて、世の中にお金を回して経済を活性化させましょう、ということですね。

■マイナス金利、さてその影響は?

半年ほど前にもここで金融緩和とマイナス金利について書きました。

「さらなる金融緩和は有効か?」(ハッピーリッチメルマガ 2015年9月29日)

少し引用します。

『日銀当座預金の残高は金融緩和のお蔭で2015年8月末でなんと231兆円にもなっています。前年同月比52%もの増加です。民間銀行が日銀においておかないといけない「法定準備預金」というのがありますが、それは全体合計でだいたい8.7兆円くらい。残りの222兆円くらいは世の中に出してもらいたいのに出て行っていないお金ということになります。(中略)

EUはすでにマイナス金利です。ECB(欧州中央銀行)は余っている当座預金残高に対して金利を徴収するという政策をとっています。これだと銀行はお金を使う方向に向かいますよね。しかし、日銀の当座預金には0.1%のプラス金利が付いています。これだとEUとは違って貸し出しに対する強烈なモチベーションはかからないですよね。』

・・・と、このように書きました。

これまでは当座預金に0.1%のプラス金利でしたが、これからはEUと同様に0.1%のマイナス金利をつけることになるわけです。

 

日本経済はなかなかデフレから完全に脱却することができません。年初からは中国人民元安や原油安などでリスクを嫌うマネーが円に向かったことで円高になってしまいました。本来なら米国が利上げに向かっているのですから円安ドル高になるはずだったのに・・・。

おかげで企業業績の先行きも不透明になってしまい株価も下がりました。

これが今回のマイナス金利の導入でまた円安の流れに戻りました。それに応じて株価も戻ってくることと思います。

ただ、日銀当座預金をマイナス金利にすると民間銀行の収益が圧迫されるのではないか?、という懸念から金融機関の株価が下落しました。しかし、実はマイナス金利はこれまでの日銀当座預金のすべてに適用するのではなくて、これから積み増す部分に対して段階的に適用していくようです。だからすぐに銀行経営に悪影響が出るわけでもなさそうです。

つまり、実は今回のマイナス金利の導入はそれほど実体経済に強い影響を与えるわけではないのです。ただアナウンス効果は絶大でしたね。

日銀の「デフレから脱却するまで金融緩和はやめない!」という強い意志が感じられました。なにより「マイナス金利」という日本の金融史上はじめてのワードが鮮烈でしたね。

 

結局、景気回復のためには民間銀行がお金を市場に出す行動に出ないと今の状況は変わらないわけです。ただし今銀行は「貸したいけど貸すところがない」という状況です。企業はまだまだ積極的な事業拡大には慎重で、雇用も、賃上げも、設備投資も、在庫積み増しも、恐る恐るやっています。

今回のマイナス金利は近いうちに預金金利や貸出金利の低下につながると思います。そうなった時に消費や投資が増えるか、日銀当座預金の残高が積み上がらずに、民間銀行の貸出残高が増えるかどうか。その時にはじめて今回のマイナス金利導入がうまく機能したかどうかということが評価されるでしょう。

 

■住宅ローンはすでにマイナス金利?

ところで…、
実は住宅ローンはすでにちょっと前から実質的にほぼマイナス金利になっているのはご存知でしたか?

・・・というと驚かれるかもしれませんね。正確に言うと「借りる人の条件次第で当初10年間だけ」ですけれども、住宅ローンで支払う利息よりも多くのお金が家計に戻ってくる場合があります。

はい、それは「住宅ローン控除」とか「すまい給付金」といった住宅購入支援の仕組みのことですね。

 

今、住宅ローン金利は大変は低金利です。変動金利だとネット系金融機関などでは0.5%~0.8%くらい。10年固定金利でも1%前後ですから、当初10年間の平均金利が1%を切ってもおかしくはありません。そして「住宅ローン控除」は当初10年間、住宅ローン残高の1%を上限として支払っている税金が戻ってきます。

 

計算してみましょう。

例えば、年収600万円の人が、3,500万円の住宅ローンを30年借りたとします。そして当初10年間の平均金利が0.9%だったとしましょう。

そうしますと、当初10年間のローン利息の支払い総額は約268万円です。

一方、住宅ローン控除で戻ってくる還付金は約292万円です。

差し引き24万円のプラスですね。

 

これは住宅ローン控除が適用される当初10年間だけですし、還付金(支払っている所得税・地方税の戻り)は収入額によって変わります。あくまで条件次第ですので「今すべての住宅ローンはマイナス金利」というわけではありません。でもそれくらい異次元な状況にあることは間違いありません。

今回のマイナス金利の影響で、昨日(平成28年2月1日)、長期金利(新発10年物国債)が史上最低の0.05%をつけました。おそらく近々、住宅ローン金利もさらに下がって過去最低水準を更新すると思います。

「ローンは銀行に支払う金利がもったいないから嫌だ」という人は少なくありません。でも今なら利息負担は限りなくゼロに近いくらいです。金利動向含めて、住宅購入を検討されている方にとっては気になりますね。

今後も要注視!です。