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空き家問題、施策を理解して早めの対策を

2016年03月10日

いつもありがとうございます。ansの川瀬です。

空き家についてメルマガに書きました。ご参考下さい。

(ハッピーリッチメルマガ238号より http://www.happyrich.jp/columns/238.html

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■空き家の何が問題か?

空き家が増えて問題になっています。

総務省の調査によると全国の空き家総数は約820万戸。空き家率(住宅全体に占める空き家の割合)は13.5%。いずれも過去最高水準に達しています。野村総合研究所は、空き家の転用が進まなかった場合には、20年後には空き家率は30%を超えると推計しています。

今、日本は人口も世帯数も減っていますので空き家が増えるのは仕方がありません。ただ、だからといって空き家を放置しておくことは社会的な損失を増やすことになりますので避けねばなりません。

誰も住まない家は劣化のスピードが早くなります。劣化した廃墟のような家は街並みの景観を悪くするだけでなく、ゴミが不法投棄されたり、不法侵入されて犯罪の温床になる可能性もあります。火災も心配です。最終的に建物の撤去・解体を自治体がしなければならなくなると財政への負担も増えます。国土交通省はこういった廃墟のような管理されない不動産の増加は「周辺住民に不利益をもたらす」としています。

では、皆さんが実家の相続などで空き家の所有者になってしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

 

■空き家は固定資産税が6倍になることも

結論から言いますと、自分も家族もその空き家を利用する予定がないのであれば、早めに売却を考えるのが無難です。

空き家は所有しているだけで費用がかさみます。固定資産税や都市計画税も、家が建っているので軽減されているとは言え一定額が毎年かかりますし、水道・光熱費や火災保険料、定期清掃などの管理の経費もかかります。こうした費用は年間数十万円にもなります。

昨年、空き家を放置しないための施策が打ち出されました。住宅用地の固定資産税は6分の1に軽減されていますが、市町村などの自治体が「特定空き家」と認定すると軽減の対象外になります。固定資産税が6倍になるわけです。

さらに「倒壊の恐れがある」とされますと修繕や解体の指導がきます。所有者が指導に従わない場合には自治体が強制的に解体を執行することもできるようになりました。その解体にかかった費用は原則所有者の負担です。

空き家のままおいておく減税のインセンティブがなくなり、むしろペナルティが課せられる可能性が出てきたわけです。

 

■売却を促進する税制改正が4月よりスタート

政府は空き家施策で「アメとムチ」を用意しました。固定資産税6分の1優遇の打ち切りや解体の強制執行などは「放置するな」という「ムチ」ですね。次は「アメ」の施策が今年の4月から始まります。それは『空き家を売却した際の譲渡所得の3,000万円特別控除』です。

譲渡所得とは売却価格からもともとのその住宅の取得費を差し引いたものです。要するに「家の売却益」のことです。通常その売却益に対しては譲渡所得税がかかります。税率は所得税・地方税合わせて20%です。

例えば、ざっくりいうと2,000万円で元々取得した不動産が3,000万円で売れたら利益は1,000万円ですね。そこに20%の譲渡所得税(200万円)がかかります。(5年以内の短期保有の場合の税率は39%)

空き家の場合、取得価格がいくらだったのかわからないくらい古い家が多いのですが、そういった取得原価がわからない場合には譲渡価格の5%を取得費とみなすことになっています。3,000万円で売れたときの取得原価は150万円になります。そうなりますと譲渡所得は2,850万円ですね。

譲渡所得税は2,850万円×20%=570万円。

結構な額を税金として支払わねばなりませんね。これが4月からは、相続から3年以内に限ってですが、譲渡所得3,000万円までは税金がかからなくなります。

譲渡所得の優遇については、もともと自宅の売却時には3,000万円までの控除がありますが、自分が住んでいない空き家は対象外でした。それが今回の税制改正で対象になるのですから「それなら今のうちに処分しておこうかな」となる人も増えるかもしれませんね。

このアメの施策は、特に不動産価格の高い都市部ではそれなりの効果を発揮するのではないでしょうか。4月以降、空き家や更地が売りに出る可能性はあるかもしれませんね。

 

※適用には様々な条件があります。よくご確認ください。
※適用条件:相続した空き家であること。旧耐震しか満たしていない建物で、相続人が必要な耐震改修または除却を行うこと。

 

■問題は売りたいけど売れない家・・・

親から相続した上を管理もせずに放置しておくことのリスクはこれまでよりも格段に上がっています。だから税を優遇するので早めに売ったらどうですか、というのが国の施策です。

しかし、この施策で解決できるのは恐らく今の空き家の一部だけだと思います。

約820万戸の空き家のうち賃貸住宅が5割強あります。賃貸住宅は空き家になっても多くは管理がなされているのでそれほど問題はありません。問題は約400万戸ほどある持家の方です。

持家の中でも立地条件が良くてそれなりの値段で売却できるものや、それなりの賃料で貸せるものであればそれほど問題はありません。(そんな良い立地にある家ならそもそも空き家で何年も放置はされないでしょうけどね)

 

問題は、売りたくても売れない家です。例えば郊外にある老朽化した家のような場合です。売りに出しても買い手がつかないのですから処分ができません。そのまま適切な管理もされずに放置されるうちに劣化が進み資産価値が下がり、ますます売れなくなる。これが廃墟に向かう悪循環です。こういう物件は値段を下げたところでなかなか売れません。

自治体に寄付しようとしても恐らく断られるでしょう。利用価値のない不動産は管理費がかさむだけですからね。自治体としても税金を使ってそんなことはできません。

売りたくても売れない、自治体も誰も引き取ってくれない、そのうちに固定資産税も上がる・・・

八方ふさがりですね。

こういう場合、費用をかけて解体して更地にした上で無償でも引き取ってもらえるかということを早めに考えないといけないと思います。解体費用は持ち出しになってしまいますが、それでも将来にわたって続く所有コストよりも解体費が安く済む計算になるなら選択肢になるでしょう。

 

国土交通省の調査では空き家の取得理由の過半数が「相続」です。相続した空き家はある程度の費用をかけても相続人が自己責任で何とかするように、という時代が来ています。

「とりあえずもらっておこうかな」という程度の軽い気持ちで相続すると後々大変なコストがかかってしまうかもしれません。市場価値のある空き家はあまり価格にこだわらずに、建物が劣化する前に早めに売却するのがよいかと思います。

今回は以上です。