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2017年01月26日
いつもありがとうございます。ansの川瀬です。
今回は住宅市場についてです。
住宅ローンの申し込みにブレーキがかかったようです。さてこの記事、どう見たらよいのでしょうね。
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<住宅ローンしぼむ市場 12月申し込み4.3万件に減少>(2017年1月19日付 日本経済新聞)
【住宅ローン取引の減速が鮮明になってきた。主要8行への申込件数は2016年12月に約4.3万件と日銀がマイナス金利政策を導入する前の水準まで低下。米大統領選後の金利上昇を受けて大手行は17年1月から10年固定の最優遇金利を引き上げており、さらに勢いが鈍る可能性がある。(中略)住宅市況の変調がいよいよはっきりしてくれば投資を控える動きも懸念される。景気への影響も懸念される。】
2016年12月の住宅ローンの申込件数が激減したとのことです。
この調査は三菱東京UFJなど3メガバンクと三井住友信託、りそな、さらに住信SBIネット銀行などインターネット専業3行の取引を集計したものなので、住宅ローンのすべてというわけではありませんが、傾向を見るには十分なものだと思います。
この要因はやはり「住宅ローン金利が上がってきたから」でしょうね。
2016年9月に日銀が金融緩和の姿勢を少し変える方針を出して以降、11月12月とほんの少しではありますが、各行は住宅ローン金利を引き上げました。どうやらそれで申込件数が減少したのでしょう。
記事によると『2015年(H25年)に月平均4万件程度で推移していた住宅ローンの申込件数は、日銀がマイナス金利政策を導入した直後の2016年(H28年)3月には8万件に倍増した』そうです。
それが先月の12月にまた4万件程度まで落ちたということですね。
さて、記事にあるように、これが「住宅市況の変調」の始まりで「景気への影響も懸念される」事態になるのでしょうか?
私見ですが、「今のところ」景気への影響は懸念するほどではないでしょう。
まず、この住宅ローンの申込件数の落ち込みは住宅市況の変調ではありません。国土交通省から毎月発表されている新設住宅着工棟数を見ると、住宅の新築は依然として好調に増えています。新しく住宅を取得して住宅ローンを組むであろう「持ち家」と「分譲住宅」の合計戸数はだいたい月4.5万戸前後で、ここしばらく安定的に推移しています。
そもそも新築着工棟数が月4.5万戸程度なので、住宅ローンの申込件数が4.3万件になったと言われても「そりゃそうでしょ」ということになります。むしろピーク時には住宅ローンの申し込みが8万件もあったことの方が驚きです。
これはどういうことがというと、これまでの住宅ローン申し込みの半数近くは既存の住宅ローンの借り換えだったということでしょう。つまり、この記事が意味するところは『高い金利から低い金利への住宅ローンの借り換えの駆け込みが金利の上昇とともに終わった』ということです。
借り換えは、住宅ローンを高い金利から低い金利に切り替えただけですからほぼ景気やGDPには影響を与えません。銀行の利息収入が少しだけ減って、その分家計が少し助かるだけです。しぼんだのは「住宅ローン市場」であって、「住宅市場」ではないのです。
今のところ、ですが。
住宅業界では、2019年10月に予定されている消費税の10%への増税に向けて、その直前(だいたい2019年3月頃)に駆け込み需要があるのではないかと見る向きがあります。しかし、ここ最近、すでにずっと住宅需要は高いのです。
本来なら今ごろの着工はもっと落ち込んでいると数年前には予測されていました。それは一次取得者層といわれる20代後半から30代後半くらいの層が、人口も世帯数も減少しているからです。
住宅購入世代の人口が減っているのに着工戸数は減っていない(むしろ増えている)。
つまり今、すでに需要の前倒しが起きている、ということなのかもしれませんね。この前倒しを後押ししている要因のひとつは「低金利」であることは間違いないでしょう。もし今の金利上昇傾向が今よりももっと鮮明になれば、逆に今以上の「金利上昇前の駆け込み」が起きるかもしれません。消費増税の2019年を待たずして。
そしてその後に反動の落ち込みがあるでしょう。その時には景気への影響も出るでしょうね。
さて、金利はどう動くのでしょうね。まだまだ日本は低金利政策をとっていますので急激な上昇はないと思いますが、こればかりはわかりません。
注意深く見ておきましょう。
(ハッピーリッチ・アカデミー カワセ君のコラム260号 2017年1月24日付を再構成しました)